はじめに、9月6日の事故米発生の新聞報道に接して直感的に思ったことから書き留めておきたいと思います。(3点)
一つは、私がミニマム・アクセス米(以下、MA米と略)の流通の実態調査を進めていた7、8年ほど前の話です。旅費を使ってヒヤリングに行ったのですが、そのときの担当官の返答は、「MA米の流通の把握は食糧庁の業務ではありません」とまさに木で鼻を括ったような対応で、腹が立って腹が立ってそのときの屈辱をいまだに忘れることができません。今次(9月11日)、白須農水事務次官の会見での「責任は一義的には食用にまわした企業にある。立ち入り調査は不十分だったが、農水省に責任があるとは考えていない」との発言を知り、これが本音で7、8年前の考え方は現在も少しも変わっていないのだと改めて確認しました。こういうことなのですから、今回のような事故はいつ起こっても不思議ではないということなのです。
二つには、国会証言としてもあることなのですが、MA米は「主食用米の生産・流通・販売に影響がないように販売・流通させる」というのが国の建前としてあるのです。また、現行の米政策改革(食糧法の改正)が2004(平成16)年5月からスタ−トとしているのですが、それが議論された2002(平成14)年の生産調整研究会でも、「MA米は主食用米の生産・流通・販売・消費には何らの影響を及ぼしていない」ことを前提にしていたわけです。当時私は、微力ながら、加工米需要が主食米の需給と価格になんらの影響を及ぼさないなどという議論は経済理論としても非現実的な仮説であって不適切という論陣を張っていました。しかし残念ながら、現行の米の生産・流通システムはその不適切な仮説を前提にして制度設計されているということなのです。ですから、今回の事故米の発生が明らかにしたように、それが加工用米どころか主食用にも回っていたということになりますと、制度設計からやり直してもらわなければならないということになるわけです。
三つには、農林水産省がこのような事故米輸入の実態を隠し続けてきたという驚きです。国民にとっては、まさに晴天の霹靂という他はないでしょう。「まさか」とただ驚くばかりでしょう。加えて、しかもこのような残留農薬米を輸出国に突き返せないという国際的に無力なあまりに無力なあわれな日本を思わない訳にはいきません。普通は、「怒りをもって突き返せ」でしょう。
今回はこのくらいにしておきます。業者が暴利をむさぼってきたこと、行政(農政事務所)の業者との癒着等々の新しい報道に接しますと、ただ驚き、あきれ、怒りだけではすまない、もう少し「事故米」についてきちんと理解しておかなければならないなと思います。
なお、初回なので、理解を深めるために、以下のようなミニマム・アクセス米とWTOについてのミニ・メモをつけておきます。 |